シルクは、18種類のアミノ酸を含むタンパク質からなる天然繊維です。蚕が成虫に成長するために作られる繭は、温度、湿度、紫外線を自然に調節する機能を持ち、夏涼しく冬暖かいのが特長です。また人の肌に近い状態のタンパク質を豊富に含むため、人体への刺激が少なく、アレルギー体質の方にも安心してお使いいただけます。現在では衣料品のみならず、化粧品や医療分野でも活用され、シルクの効能はますます注目されています。
1. しなやかな光沢と質感
精練されセリシンを除去したフィブロインは、細く不均一で断面が三角形であるため、光が当たると三角プリズムのように繊維の内部で複雑に反射を繰り返し、あの特有のしなやかな光沢が生み出されます。また、細くほどよい固さを持つ繊維なので、柔らかさの中にもコシやハリがあり、肌で感じる暖かみも加わって、他のどの繊維よりも優れた触り心地を実現します。

2. UVカット効果
タンパク質に含まれるアミノ酸が、有害な紫外線をカットします。この特性は、シルクを作り出す蚕が厳しい自然環境の中で生き抜くために会得した生理作用からきていると言われています。そのため、シルク製品を身につけると、紫外線からお肌を守ることができます。

3. 防臭・消臭効果
微生物の繁殖を抑制して皮膚を正常な状態に保つ抗菌効果があり、消臭や防臭効果も期待できます。
4. 吸湿性・放湿性
コットンの1.3~1.5倍の吸水性、1.5倍の放湿性を持ちます。余分に取り入れた湿気を外気に放出する作用もあるので、身体から放出された汗を簡単に吸収・放出し、汗をかく季節もサラッと快適です。1日に2リットル以上も汗をかくといわれる人間にとって、体を包む衣服が良く水分を吸い取り、放出することは、着心地の面だけでなく保健衛生の面からも非常に大切なことと言えます。

5. 保温性
繊維と繊維の間に空気を多く取り込み、体熱を繊維の中に閉じ込めて逃さないので、薄くても暖かさがあります。保温機能だけでは、冬場に汗ばみ風邪をひく原因になりますが、シルクはその汗も吸収し排気するので風邪をひきにくくします。

6. 美肌効果
シルク繊維には天然の保湿成分が含まれており、肌への吸着性も高いので、シルクを身につけていると、まるでパックしているように乾燥からお肌を守りうるおいを保ちます。現在では衣料品のみならず化粧品や医療分野でも活用されています。

7. 肌に優しい
タンパク質でできたシルクは、人体とほぼ同じアミノ酸組成も持つ人肌に最も近い天然繊維。人体に対して生体適合性が高く刺激がほとんどないため、アレルギー体質など敏感肌の方にも安心してお使いいただけます。また、繊維を摩擦すると静電気が発生し帯電しますが、シルクは吸湿性が高いため摩擦による帯電が生じにくく、不快感を味わうこともありません。ちりやホコリを寄せつけないため、喘息やアレルギーの予防効果もあると言われています。

8. 安全性(強度が強く、燃えにくい)
シルクは細い糸で作られているため、弱いと思われがちですが、シルクの引っ張り強度は同じ太さの場合、羊毛やコットンよりも強い素材です。また化学繊維と異なり、燃えにくい繊維と言えます。シルクは300度以上でないと燃えないばかりか溶解もしないので、化学繊維のようにすぐに溶解し身体に付着して大火傷する危険性が少なくなります。
東京農業大学教授

長島 孝行 (ながしま たかゆき)


ニューシルクロードプロジェクト代表。
日本野蚕学会常任評議委員、日本千年持続学会理事等を務める。
インセクトテクノロジーを提唱。

○資源としてのシルク
シルク=カイコと思っている方、それは大きな間違いです。シルク(絹)を作る動物は何と10万種を超えるのです。確かに日本ではカイコのシルクは有名です。しかし、世界中のシルクを吐く生き物を調べてみると、ガやチョウの仲間の殆ど全ての種がシルクを作ります。ガは繭を作り、チョウは変態時の足場糸を吐き出します。また、チョウの仲間でも大きな繭を作るものもいます。サイズだけではなく色も多彩で、金、銀、銅の繭も存在します。更にはコウチュウの仲間、ゴキブリの仲間、クモは勿論のこと、貝の仲間も糸を作るのです。シルク=繊維と思っている方、それも大きな間違いです。シルクの92%以上はタンパク質で構成されています。もうすでにシルク=タンパク質と捉えた研究・ものづくりが始まっています。そのシルクタンパク質の機能を調べた結果、私達人類にとって非常に便利な驚くべき機能が発見されました。特にシルク糸の成分の大半を占めるフィブロインというタンパク質には、生体親和性、制菌性、紫外線遮蔽性、難消化性などの特性が見られます。更には加工技術が進んだことで、タンパク質のパウダー化から生分解性プラスチックまで作られるようになったのです。このように見方を変えて考えてみると、シルクは我々が住む地球上に存在する「限りない資源」ということが言えるのです。
○シルクと日本の未来
上記したようにシルクは10万種あり、それぞれ機能性やナノ構造が微妙に異なります。
日本のシルク研究、桑研究は、世界でトップを誇ります。その日本の数少ないトップクラスの技術から成る産業(養蚕業)を日本は今、全てなくしてしまおうという、奇妙な未来デザインを選択しました。皆さん良く考えてください。日本の「食」はカロリーベースで40%(生産額ベースでは66%)の自給率がありますが、「衣」の自給率はいくつでしょうか?答えはほぼ0%です。ただでさえ資源の少ない国家が、そんな自給率で健全に存続するというのでしょうか?シルクの種類、機能性、ナノ構造など別の観点からシルクを見直す、また、桑においてもカイコの餌という観点から脱却する。そういう考えを私は持っており、数年前に「ニューシルクロードプロジェクト」を立ち上げました。別の言い方をするならば、「第二次養蚕業の始まり」です。

○世界に通用するものづくり
日本のものづくり技術が精巧かつデザイン性に非常に優れているということは、世界が認めています。シルクの糸づくり、染色そして織についても同様です。そう、山嘉精練の8デニールや5デニールの糸づくりはすばらしい。その証拠に、過去においては日本の外貨の半分近くを絹で稼いだという時代があったのです。また、その象徴が「横浜」です。しかし、日本の“繊維としてのシルク”が、以前のように世界に大量に売れる時代は期待すべきではありません。付加価値の高い商品を世界に売っていく。その方法しかないのかもしれません。しかし、前に述べたシルクタンパク質の機能性などを利用した非繊維での化粧品やサプリメントなどのものづくりと並行して、次世代型のものづくりをしていけば日本シルクの未来は開けるのです。世界には真似のできないものづくり、心の豊かさが期待されるものづくり、懐かしくて新しい未来のものづくり。そんなものづくりを期待しています。

○SHIDORIの評価
シルクを繊維として使う場合、家庭用洗濯機で洗う事が必須の現代では、シルクは黄変がおき、洗濯機で洗うと痛むという印象が根強いです。このことはシルク商品の開発を妨げる原因でもあり、制作サイドが消費者に提案しづらい理由でもありました。しかし、山嘉精練が開発したSHIDORIを使用したカイコのシルク商品は、とても家庭用洗濯機で何度も洗濯したとは思えない光沢や風合いが維持されており驚きました。ここまで技術が革新できているのであれば、シルクの使える範囲が格段に上がることは間違いないでしょう。これから私の研究と山嘉精練の技術力をミックスさせていくことで、まったく新しいシルクを作り出し、日本人だけでなく、人類に必要な素材へと昇華させていきましょう。